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スーツの値段はなぜ違う?素材・縫製による原価の違いを徹底解説!

こんにちは!ファッションデザイナーの江森です。

素材が同じなのに何故、ブランドによって値段が違うのだろう?

スーツの1万円の値段差は何が違うのだろう?

中国製のスーツは安いけど、やっぱり日本製のスーツの方がイイの?

など、ブランドやお店によってスーツの値段や縫製する国が違うのは何故?と疑問を持ったことはありませんか?

この記事では、イタリアやオーダーなどのスーツに30年間携わってきたプロの目線でスーツの値段の違う理由について分かりやすくご紹介していきたいと思います。

この記事を最後まで読んで頂ければあなたは明日から必ず言えます。

私、スーツの値段で絶対失敗しないので!」と。

スーツの値段を決める要素とは

スーツの値段を決める上での要素は素材、付属、縫製と大きく分けて3つあります。その一つ一つについて解説していきたいと思います。

1-1.あなたの欲しいスーツとは?

あなたの欲しいスーツ

スーツの値段が違う理由を説明する前にこのブログの記事は長いので時間がない「あなた」や結論を急ぎたい「あなた」は下記に挙げるイメージ例の中で、自分の欲しいスーツのイメージに近いものをクリックして下さい。

私が考えるオススメのスーツの価格帯を手っ取り早くご紹介します。

・イメージ例

1-2.値段を決める要素は3つ

価格を決める要素は3つ

スーツの値段を決める上で重要な要素は「素材代」「付属代」「縫製代」の3つになります。これらの3つを足し算した合計が製造コストになり、製造コスト以外の諸経費分(人件費、家賃、販促費 ete・・・)などを加味して最終的にスーツの値段が決定されるのです。

1-3.現在のスーツの価格帯は?

現在のスーツの価格帯

値段の決め方については説明しましたが、現在の国内ブランドや各ショップなどのスーツの中心価格帯を整理してみると。

  • 量販系  10000円~30000円前後 (税込み)イオン、ヨーカードーなど
  • ツープライス系 20000円~40000円前後 (税込み)スーツカンパニー、スーツセレクト、オリヒカ、パーフェクトスーツファクトリーなど
  • 郊外店系 20000円~100000円前後 (税込み)青山、AOKI、はるやま、コナカなど
  • セレクト系 50000円~140000円前後 (税込み)ユナイテッドアローズ、ビームス、エディフィス、シップス、アーバンリサーチなど
  • 百貨店系  50000円~140000円前後 (税込み)ポールスミス、タケオキクチ、ダーバン、五大陸、ポールスチュアートなど
  • 参考 インポートブランド系 150000円~600000円前後 (税込み)

大体ではありますが、現在以上のような価格帯の構成になっていると思います。

素材の違いと価格の関係とは

まず、最初にスーツを構成する重要な要素である「素材」について解説していきます。

2-1.中国素材について

中国素材について

大量生産が原則のため、量販店や郊外店、2プライスなどのスーツに使用されるケースが多い。

  • 価格・・・・低価格でリーズナブル
  • テイスト・・・・万人向けでベーシックな柄が多い
  • 品質・・・・大量生産で作るため比較的安定している。
  • 耐久性・・・・強度をつけるためポリエステルを使用したりする素材も多い事から耐久性は強い

2-2.国内素材について

国内素材について

中国素材と違い少量生産が可能なため、同じスーツを大量に作らないセレクトショップや百貨店のスーツなどの高価格帯ゾーンで使用されるケースが多い。

  • 価格・・・・少量生産のため高価格
  • テイスト・・・・中国素材と比較すると個性的な柄も多い
  • 品質・・・・日本の基準は厳しいため高クォリティーなモノが多い
  • 耐久性・・・・日本の基準は厳しいため耐久性は強い

2-3.イタリア素材について

イタリア素材について

感性の国が作り出すイタリア素材は色、柄共にファッション性が高いため量販店郊外店、2プライス系の高価格ゾーンやセレクト系、百貨店も含めて全てのジャンルで使用されている。

  • 価格・・・・中~高価格帯まで幅広い
  • テイスト・・・・色、柄共に非常にファッション性が高い
  • 品質・・・・世界中に販売しているため、高クォリティーなモノが多い
  • 耐久性・・・・感性重視のため、ヘビーユースには向かず耐久性は弱い

2-4.イギリス素材について

イギリス素材について

伝統の国が作り出すイギリス素材はイタリア素材に比べて生地メーカーの数も少なく希少性が高いので、セレクト系や百貨店などの高価格帯ゾーンで一部マニア向けに使用されるケースが多い。

  • 価格・・・・生産量が少ないため高価格
  • テイスト・・・・伝統的な色や柄使いのため非常にクラシック
  • 品質・・・・高級ブランドにも使用されておりクォリティーは高い
  • 耐久性・・・・イギリスの雨が多く湿度の高い気候に耐えられるようにしっかりと作られているため耐久性は高い。その反面、イタリア素材と比べると固くと重たいのが難点

付属の違いと価格の関係とは

スーツを構成する上で「素材」のように表面には見えませんが、スーツの内部を構成する重要なパーツである「付属」について解説していきたいと思います。

3-1.付属とは何か?

付属とは何か

付属とは大きく分けて2種類あります。表からは見えずに内部に使用される芯地、パット、裄綿と表に見える部分に使用される裏地やボタンなどです。

内部に使用される付属はスーツを形作るために用いられ、外部に使用される付属は機能性や装飾性を高めるために用いられているのです。

付属の中でも特に大事な要素としては、芯地、ボタン、裏地の3つになります。

・芯地とは・・・・ジャケットの襟や胸など強度が必要な部分に入っている厚めの布地のこと。芯地を入れることで、厚みや張りを出して型くずれを防いだり、シルエットがキレイにでるように補助する役割のために使用される。

・裏地とは・・・・スーツなど衣服の裏側に使用される布地のこと。すべりをよくして着脱しやすくしたり、表地の透け防止や保温などの役割のために使用される。

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車で言えばボンネットの内側にあるエンジンルームのパーツと外側にあるタイヤやホイールとの関係性みたいなものになります!

3-2.低価格スーツと高価格スーツの付属の違いとは?

低価格スーツと高価格スーツの付属の違

一般的なベーシックデザインのスーツにおいては、価格帯の違いによって付属の内容は変わってきます。

価格帯による芯地、ボタン、裏地の違いについては下記の表のようになります。

   ・芯地の違い・・・・接着芯と半毛芯と総毛芯の3つの種類があります。

価格帯 芯地仕様 仕様の特徴と価格との関係 メリット&デメリット
低価格帯 接着芯仕様 表生地と芯地をノリで接着するやり方で、芯地も安価なためコストがリーズナブルな方法 軽く着用出来るが、型くずれがしやすい
中~高価格帯 半毛芯仕様 襟や上半身に毛芯を使い前身のウエスト部分より下を接着芯だけにしてコストを抑える方法 適度な重さで上半身の型くずれはしにくい
中~高価格帯 総毛芯仕様 襟や前身全体に毛芯を使用して手間がかかるため、最もコストがかかる方法 少し重くはなるが、長く着用しても型くずれはしにくい

接着芯とは・・・・ポリエステル系の素材を使用して、あらかじめノリが付いた不織布タイプの芯地。

毛芯とは・・・・ウールや綿と化学繊維などを織り込んで作られた芯地。毛芯にもランクがあり高級なものとしては馬の尻尾を使った本バス芯、ラクダの毛を使ったキャメル芯、麻を使ったリネン芯などがあります。

上の表に関してはあくまで通常のビジネススーツを前提とした価格帯と芯地の関係性ですが、最近では「軽さ」や「柔らかさ」などを意識した付属使いで着心地感とファッション性を意識したデザインのスーツがセレクトショップやイタリアのインポートブランドを中心に打ち出されて人気を得ています。

これらのスーツは高価格帯ではありますが、あえて接着芯だけを使用したり毛芯を使っても最小限にしたりと、今までとは違う新しい概念で作られていますので価格帯と芯地の関係性も一概には言えなくなってきています。

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今の人気のあるスーツの傾向としては出来るだけ付属の量を少なくしてイタリアのように軽く柔らかく仕立てることです!

・ボタンの違い・・・・代表的なものでプラスチックボタンと水牛ボタン、本ナットボタンなどがあります。

    価格帯  ボタンの種類       ボタンの種類と価格の関係
 低~中価格帯  プラスチックボタン ポリエステルや樹脂のユリアを原料にして、それらを天然風に加工して作られたイミテーションボタンでコストが安い
 中~高価格帯  本ナットボタン ヤシの木の実を原料に手作りの作業で加工された希少性の高い天然ボタンでコストも高い
 中~高価格帯  本水牛ボタン 水牛の角から採取され、手作りの作業で加工された希少性の高い天然ボタンでコストも高い

・本ナットボタンや本水牛ボタンはコストが高いため、高価格帯で使用されるケースが多いですが、「生地代」と「縫製代」のコストを抑えることにより中価格帯のスーツでも使用されることがあります。

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プラスチックボタンも進化していてパッと見はかなり天然ボタンに近いタイプや天然ボタンでは表現しにくい加工ボタンなどデザインバリエーションが増えているので、デザインするときに自分で選んでいても楽しくなります!

・裏地の違い・・・・代表的なものとしてポリエステル、レーヨン、キュプラ(ベンベルグ)などがあります。

    価格帯   裏地仕様      裏地の特徴と価格に関係
  低価格帯 胴裏 ポリエステル袖裏 ポリエステル ポリエステルの裏地は摩擦に強く耐久性が高いのが特徴。通常のタイプは吸湿性に欠けるが、コストはリーズナブル
  中価格帯 胴裏 キュプラ(レーヨン)×ポリエステル  袖裏キュプラ100 キュプラやレーヨンにポリエステルをミックスする事により高級感を保ちながらも耐久性が良くなり、キュプラ100に比べてコストも安い
  高価格帯 胴裏 キュプラ100袖裏 キュプラ100 キュプラ裏地は絹のような光沢や滑らかな手触りが特徴。吸湿性に優れて静電気も起きにくいが、高級品でもあるのでコストも高い

キュプラ・・・・綿実や綿花を採った後に残った繊維を溶液で溶かして紡糸したものであり、キュプラとは「銅」の意味で別名として「ベンベルグ」と呼ばれています。キュプラが一般的な名称で「ベンベルグ」は旭化成の商標名です。

レーヨン・・・・木材パルプを原料にして製造された繊維で、光沢感やドレープ性、吸湿性などキュプラに似た特性を持っている。

上の表に関してはあくまで通常のビジネススーツを前提をした価格帯と裏地の関係性ですが、最近ではウォッシャブル性やストレッチ性の機能性を前面に打ち出した中価格帯のスーツなどではあえてポリエステルの裏地を使用することも増えているので、今までの概念は変わっていく可能性があります。

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安い裏地のイメージだったポリエステル裏地も「吸水速乾」「ストレッチ」「静電防止」などの様々な機能を持ったタイプが出て進化しているのでオススメです!

縫製国の違いと価格の関係とは

縫製国の違いと価格の関係

スーツの価格を決定する際には、どこで縫製しているかも重要な要素になります。ここでは縫製国の違いについて解説していきたいと思います。

4-1.海外縫製について

海外縫製としては主に2つあります。1つは中国縫製、もう一つはベトナムやミャンマー、インドネシアのなどの東南アジア縫製です。

・中国縫製とは

  • 価格帯・・・・以前は低価格のスーツが中心であったが、中国経済の発展と共に人件費も値上がりして、現在では中価格帯やハンドメイドなどの高価格帯ゾーンなどが中心へと移行しつつあります。
  • 技術力・・・・ヨーロッパやアメリカ向けのブランドの縫製も行っていることからも一定の技術力があり、特にハンドメイド縫製のテクニックを持った工場のスーツは完成度は高い。
  • 品質・・・・量販系や郊外店系などの品質にうるさい大量生産を経験してきたこともあり、品質管理能力は高いです。
  • 生産力・・・・10年ぐらい前までは低価格帯スーツの大量生産を一手に担ってきたが、現在では低価格帯スーツの生産基地が東南アジア縫製に移ってしまったため、縫製代の高さに見合ったセレクト系や百貨店系の既成スーツやオーダースーツなどの中量生産がメインに移行しつつあります。

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中国の縫製工場には今でも年に何回か行きますが、昔の「安いスーツ」のイメージと違いヨーロッパのラグジュアリーブランドのスーツの生産も行っていて、現場で縫製されているのを見て驚くこともあります!

・東南アジア縫製とは

  • 価格帯・・・・経済発展により先進国になった中国に比べて人件費などが安いため、現在では低価格帯のスーツの生産を一手に引き受けています。
  • 技術力・・・・日本やイタリアから技術者が派遣され指導が行われたことによって一定レベルの技術力を持った工場が多くなっているが、細かいこだわりなどは表現しにくい。
  • 品質・・・・量販系や郊外店系、セレクトショップの低価格帯などの大量生産の縫製がメインのため、ベーシックなスーツの品質力は良くなってきています。
  • 生産力・・・・基本的には大型工場が多いため、大量生産がメインになっています。

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低価格帯スーツの生産工場のイメージが強いですが、中には中国や日本の工場よりレベルの高いスーツを作る工場があったりするのであなどれません!

4-2.国内縫製について

工場自体が少なくなってしまっていたり、人がなかなか集まらなかったりと様々な問題を抱えている日本国内の縫製工場ですが、現状は?

・国内縫製とは

  • 価格帯・・・・工場自体が少なくなっている上に中小規模の工場が多く大量生産が出来ないため縫製代が高くなることから高価格帯ゾーンが中心になっています。
  • 技術力・・・・工場が淘汰されて特徴のあるところしか生き残っていないので、技術力があり独自のこだわりを持った工場が多い。
  • 品質・・・・百貨店ブランドなどのスーツを生産していることから品質に対する基準は厳しい。又、セレクトショップの高価格帯の生産も行っているので、細かいこだわりにも対応することができる。
  • 生産力・・・・工場の規模が大きくないため、中~少量生産が基本。しかし工員の高齢化や若い人材の確保が難しくなっているので、今後更に少量生産化が進む可能性があります。

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現在の日本国内工場の厳しい状況を考えると、「メイドインジャパン」は今後もっと希少性が高いスーツになっていくでしょう!

商品原価率の違いと価格の関係とは

商品原価率の違いと価格の関係

スーツの価格は「生地代」「付属代」「縫製代」を合算し、商品原価率を設定して決定されます。ここでは商品原価率について解説していきます。

5-1.商品原価率とは?

簡単に言えばスーツの販売価格に占める原価の割合です。

原価は商品製造に対してかかる費用の全てのことであり、製造コスト(素材代+付属代+縫製代)+諸経費=製造原価となります。

一般的には販売価格に占める原価の割合は3割ぐらいが目安となっています。

5-2.商品原価率は会社によって違う

商品原価率については説明しましたが、ブランドやショップによって会社のルールがあり商品原価率にも違いがあります。

一般的には30%前後が目安にはなりますが5%~10%ぐらいの違いによって、同じ素材、同じ工場を使っていても5000円~10000円ぐらいの価格差が出てしまうこともあるのです。

まとめ

いろいろ長々と説明してきましたが、結論としては下記になります。

要点まとめ1

作業着としてスーツを着るのであれば年々品質レベルが向上している10000円~20000円前後の量販系やツープライス系の東南アジア縫製の低価格帯スーツで十分と言える。しかし長期間の着用では型くずれなどが起こる可能性もあるので長く着れるという点を重視する人にはオススメしない!

要点まとめ2

安くてもある程度品質がよいスーツを着たいのであればツープライス系の30000円前後のスーツがオススメ。大量生産で素材や縫製代をコストダウンをしているので値段以上のコストパフォーマンスがあると言える!

要点まとめ3

長く着れるスーツを求めるのであれば、ツープライス系の30000円~40000円代とセレクト、百貨店系の50000円~60000円代の海外縫製スーツが合格点。両方の価格差はあるが品質は同じくらいで素材、縫製レベルも問題なしと言える。長く着る点を特に重視する人はイタリア素材より中国素材できたスーツの方が耐久性はあるのでオススメ!

要点まとめ4

60000円~70000円代以上のセレクト系の中国縫製スーツは部分的にハンドメイドのテクニックを使っていたりして技術レベルの高いスーツが多いのでオススメ。現在、中国のレベルの高い工場の縫製代は高くなっているので、この価格帯の中国縫製スーツは同価格帯の日本製よりも買いと言える!

要点まとめ5

80000円以上からの価格帯の日本製のスーツであればある程度技術力の高い国内工場で縫製されている可能性が高いので安心出来ると言える。それ以下の価格帯だと中国縫製の方が技術力があって品質がよい場合があるので注意が必要!

いかがでしかた?

今までご紹介してきた記事の内容を参考にしてスーツの価格の違いを理解した上で、あなたが失敗しない良い買い物ができることを願っています。